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「若さはない。でも工夫ができる」大江千里さんがNYで向き合った老いと孤独、そして愛犬との別れ


「若いときは若いってことが武器。でも今は、若さがないから工夫ができる」 。そう語るのは、NYを拠点にジャズピアニストとして活躍する大江千里さんです 。 新刊エッセイ『ブルックリンの子守唄』には、60代に入って直面した体の不調や、そこから断酒や食生活の改善、ウォーキングなど生活習慣をガラリと変えていく様子が綴られています 。 愛犬との別れや自身の老いと向き合いながら、どのようにポジティブに心と体を整えているのか 。大江さんが実践する「今の自分」を大切にする暮らしのヒントを教えていただきました。


ニューヨーク生活の悲喜こもごもを綴るエッセイ新刊。出会いと別れを繰り返した、60歳からの濃密な5年間を1冊に


――亡き愛犬ぴーすとの思い出が詰まった本作は、最後の最後まで締めの文章を練るなどこだわり抜いて作られたそうですね。ビーチで撮影したぴーすとのツーショットを描いた表紙イラストは、note読者の皆さんの意見も参考にしながら作られました。


大江:本当にありがたいですよね。地球の反対側に住んでいても心が繋がって、そうやって皆が参加してくれたことで、読んでいるみんなと書いてる僕の距離がより縮まって、す~ごくあったかい本になったと思います。


ニューヨーク生活の悲喜こもごもを綴るエッセイ新刊。出会いと別れを繰り返した、60歳からの濃密な5年間を1冊に


――この5年の間には、医療機関で断酒のプログラムを受けてお酒をやめ、食生活もガラリと変えるなど、生活習慣を次々に見直す様子が綴られています。60歳という節目を経て老いの実感をどう受け止め、ポジティブに変換しているのでしょうか。


大江:久しぶりに仕事が超忙しくて、多忙な日々が明けてふと鏡を見ると、老いという一言では片付けられない、まるで機械が動かなくなっていくような、油をさしていない状態に近い感じがして、これは……このままでいいやっていう問題ではないなと思ったんですよね。この老いを不自然に止めることはしたくないし、白髪が増えていくのもナチュラルなままでいいと思っているけど、規則正しい生活や、生活習慣を変えることでいろんなものに弾力性が出るというのは、僕は未開の可能性がどんどん広がる分野だと思っていて。


若いときは若いってことが武器で、それは素晴らしいこと。でも今は、若さがないから工夫ができるし、日々正しいリズムとテンポでゆっくり時間をかけながら、自分に必要なものと無関係なものの取捨選択を自分ですることにしたんです。そんなときに森山良子さんが元気の秘訣として唯一やっているというストレッチをやってみようと思ったの。そして、ある人から教わった朝晩の「正座」も、最初は痛いのなんの! だったけど今は大好きに。正座をしたときにどこが痛むかで、自分の体の秘密がわかるようになりました。


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